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「マイナンバー」で日本は大不況になる 4

零細社労士・税理士は廃業の危機

Q5 企業に課される「安全管理措置」は非常に厳しい内容だから、努力義務なのでは?

A5
努力義務ではなく、導入と同時に発生する義務です。猶予期間もありません。

個人情報を漏えいしてしまったら、懲役と罰金刑が科されることもありえます。公務員への罰則は、最大で3年以下の懲役または150万円以下の罰金。民間事業者や個人に対してはさらに厳しく、最大4年以下の懲役または200万円以下の罰金を科す、と決められています。

マイナンバー関連事務の委託先に対する監督義務も、厳しく定められています。私のような社会保険労務士や税理士は顧客のマイナンバーに日常的に触れるため、この「委託先」に当たります。しかし、自宅を拠点にしている零細な個人営業の事務所が大半ですから、国が求める高度な安全管理措置など実行しにくいのが現実。社労士の間では、「廃業の危機だ」という嘆きが充満しています。

Q6 マイナンバー導入によって、恩恵を受けるのは誰ですか?

A6
コンピューターのシステムやセキュリティを扱うIT企業は、すでに特需に沸いています。警備保障会社のニーズも高まるはずです。しかし最大の特需は、日本郵政でしょう。

今年10月に市町村からマイナンバーの通知カードが配布される際、個人情報の漏えいを防ぐために簡易書留が使われます。すると基本料金の上に、一通について310円の簡易書留代がプラスされるわけです。1億2000万人の国民に加えて外国人居住者、およそ5200万世帯に一通ずつ送るのですから、それだけで160億円もの増収になります。

しかもこれは、導入時だけの特需ではありません。来年以降、マイナンバーが記入された書類を郵送するときは、簡易書留が標準になるはずです。

Q7 マイナンバー制度で泣かされるのは誰ですか?

A7
もちろん、税金や社会保険料などを不正に納めてこなかった人たちが筆頭です。特に社会保険料(厚生年金・健康保険・介護保険)を払ってこなかった企業には、悪夢が訪れるかもしれません。時効である2年前まで遡って、社会保険料を徴収されるからです。

会計検査院の実地検査によって年金機構や協会けんぽが行なう調査は、これまでも2年間遡って保険料を徴収してきました。税務署と違っていわゆる情状酌量がなく、本当に厳しく取り立てます。億単位の保険料を取られた企業も、飲食業・派遣業・ビルメンテナンス業などに数多くあります。

会計検査院はこれまで、市町村から得た住民税のデータと突き合わせて名寄せし、不正を探してきました。「一定の年収があるのに、社会保険に加入していない人」をピックアップし、目星を付ける方法だったようです。マイナンバーが導入されれば、不正の発見はずっと容易になります。「法人であって、給与を支払っていながら、社会保険に加入していない会社」を検索すれば、ほんの一瞬で摘発対象リストが出来上がるのです。

社会保険に加入義務があるのに加入していない人は、どのくらいいるでしょうか。国税庁のデータ(平成25年度)によると、年末調整を行なった人は4220万人いました。これに対して、厚生年金の被保険者は3527万人。その差は693万人です。この人たち全員が、加入義務のない“6時間以内の勤務”だとは考えにくい。本当は正社員並みの長時間勤務をしていて加入義務のある人もいるはずだし、会社ごと不正に加入していないケースもあるでしょう。

仮の計算ですが、もしもそのうち100万人に「加入義務があった」と認定されたら、どうでしょうか。年収を200万円としても、100万人×200万円で人件費の総額は2兆円になります。社会保険料は人件費の3割(労使で折半負担)ですから、1年分の社会保険料は6000億円。時効が2年間なので、2年分の徴収で1兆2000億円に達します。

平成25年の健康保険の保険料は8兆円で、厚生年金の保険料は25兆円でした。そこへ1兆2000億円が加算されたら、財政はいっぺんに楽になりそうです。

私の想像では、加入義務がある人の数は100万人どころか、200万から300万人に達すると思います。本腰を入れて摘発したら、軽く3兆円から4兆円の徴収が可能でしょう。システム導入や政府広報に費やす金額を回収しても、じゅうぶんにお釣りがくるはず。政府の思惑がここにあるのは間違いありません。

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