マイナンバーショック 夫婦の危機編
これは北見昌朗の空想に基づく記事です。マイナンバーの導入を控えて、問題提議するために執筆しました。何ら具体的な根拠はありませんので、悪しからず。２０１５年１０月。
読売新聞のオンライン投稿サイト「発言小町」に溢れた書き込み
写真はイメージです
平成２★年１月、ネット上で、ある１つの話題が持ち上がっていた。それは読売新聞のオンライン投稿サイト「発言小町」への女性の書き込みから始まった。主婦が投稿したもので、こんな内容だった。
＜許せない！ 知ってしまった夫の秘密…＞
「もう、誰に相談したらいいのかわからないので、ここでブチまけさせて下さい。実は見てしまったのです。夫のマイナンバーの情報です。政府が、マイナポータルとかいうサイトを開設しましたよね。政府のサイトでは『行政機関がマイナンバー（個人番号）の付いた自分の情報をいつ、どことやりとりしたのか確認できるほか、行政機関が保有する自分に関する情報や行政機関から自分に対しての必要なお知らせ情報等を自宅のパソコン等から確認できるものとして整備します』とか説明してあるものです。平成２９年１月から供用開始しました。そこで、もしやと思って調べてみたのです。夫のマイナンバーの番号は、通知があったのでわかります。夫のパスワードは不明でしたが、たぶんアレかなと思いました。夫は「１９７５０１０２ tarou suzuki」というパスワードをいつも使っています。生年月日の次にローマ字で名前を書くという単純なヤツです。試しに、そのパスワードをマイナポータルで打ち込んでみたのです。そしたらバッチリ本人のマイナンバー情報が出てきました。
そこには、夫の年収とか預金残高とか、銀行口座とか、過去の病歴とか、ぜーんぶ載っていたのです。そこで驚いたのは年収です。夫の年収は５００万円だと思っていたのに、実は６００万円あったのです。賞与は夏と冬に出ていたのですが、そのほかにも決算賞与が１００万円もあったのです。これには驚きました。なんかもう、騙された気持ちです。だって結婚生活２０年ですよ。その間、ずっと騙してきたのですよ。
しかもです。カードの利用履歴まで載っていたので、じっくり調べました。すると、毎月のように「(株)ビブロス」（愛知県名古屋市中区錦）」という所が出てくるのです。ネットで検索したら、なんとキャバクラでした。しかも、毎月何万も。夫は、結婚以来ずっと妻を裏切ってきたのです。
もうショックです。まだ、夫には問い詰めていませんが、どうしましょうか…」
この投稿は、大反響を巻き起こした。
「そ、そんなことができるの？」「どうやって調べるの？」という情報交換が行われ、女性たちが必死になって夫のことを調べ出したのだ。その結果、とんでもない事実が判明したようで、こんな書き込みが相次いだ。
「うちなんかさー、もう聞いてほしい。まだ新婚３ヵ月ですけど、結婚前には聞いていない借金があったのです。それも４００万円ですよ。もうビックリ！ その金額をマイナポータルで見た時は、もう目が点になりました。どうしようか、思案中です」
「うちだって負けていません。実は夫の実家が借金のカタで、家が抵当に入ったみたいです。義父のマイナンバー情報をみて知りました。義母は見栄っ張りな性格で、大した収入もないのにオカネ遣いが荒いので不信感があったのですが、やはり自己破産に追い込まれる見込みです。なんで、こんなビンボーな家に嫁いできたのかと思うと悲しくなります」
まあ、出るわ出るわ、匿名のサイトだけに、みな開けっ広げに書き込んだ。まさに「妻が知らなかった夫の過去」とか「夫の現在」が暴き出された。
こうして、マイナンバーのおかげで、妻は知らないほうが良かった“夫の秘密”を知ってしまうのだった。
知らないほうが良かった“妻の秘密”も
「マイナポータルで調べると、何でもわかるらしい」という噂は、こうして日本列島を一瞬にして駆けめぐった。読売新聞のオンライン投書サイト「発言小町」には「男性発」という欄があるが、ここへの書き込みも始まった。こんな感じである。
＜毎日毎日シュークリームなんて…＞
「ちょっと気になったので、マイナポータルで妻のマイナンバー情報を調べてみました。妻のパスワードは、いつも一緒なので、すぐわかりました。マイナポータルで覗いてみると、マイナンバーの情報が、驚くほど微に入り細にわたりで、見れば見るほど怖くなりました。だって、食料品の消費税の還付を受けるためにマイナンバーのカードを使うので、どこで何を買ったのか全部履歴が残っているのです。面白いというよりも呆れてしまったのは、シャトレーゼでシュークリームを頻繁に買っていることです。それも毎日毎日ですよ。それも１個ではなく何個も。シュークリームが好きだってことは知っていたが、まさかこんなに食べているとは…。おかげで妻は日に日に太り、今では身長１５５センチ、体重７０キロです。お腹のところなんて、まさに三段腹です。結婚前は良いスタイルだったのに、それは一体どこにいってしまったのか！ 後悔しきりです。それにしてもマイナンバーって怖いですね。こんなにまでわかってしまったら困る人が出そうですね」
「ショックなことが判明しました。妻とは１年前に結婚しました。妻は学生時代にある会社でアルバイトをしていたようです。それは勤務履歴の中にエイティーワン（愛知県名古屋市中区錦）というのがあったので、どんなところかと思ってネットで調べたら、キャバクラでした。妻は学生時代の４年間でなんと年収が５００万円もあったのです。もうビックリ！ しかも私の知らない銀行口座を持っていて、そこに１０００万円も預金があるのです。日頃は『オカネがない、オカネがない』と口癖のように言っているのに。こんなことを調べてしまったとは言えないので、僕の心の中にじっとしまっておきますが、こんなことは知りたくありませんでした」
こうして、マイナンバーのおかげで、夫は知らないほうが良かった“妻の秘密”を知ってしまうのだった。
マイナンバーが、夫婦に危機をもたらすとは、政治家も役人も導入前には想像しないことだった。
いやはや。
注：実際には、マイナポータルを利用する際には、マイナンバーカードおよびパスワードが必要です。
