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マイナンバー殺人事件

マイナンバーが導入される。それに伴って気になるのが、情報の漏洩だ。いったん流出してしまうと、その被害は甚大で取り返しがつかない。
そこで北見昌朗は「マイナンバーが導入されると、こんな事件が起きるかも?」ということで空想で新聞記事を書いてみた。もちろん、あくまでも100%空想であることを、あらかじめ申し上げておく。

新宿のマンションで女性が刺殺される

平成●●年1月10日、おとそ気分も覚めやらぬ東京都新宿区で殺人事件が発生した。マンションで女性が刺殺されているのを管理人が見つけ、警察に通報した。警察は周辺を捜索したところ、不振な男性を見つけ、職務質問したところ、男は「自分が刺しました」と自白したため、警察は逮捕した。男の氏名はAで、新宿区在住の45歳の都臨時職員(自称)だった。

刺されたのは、新宿区在住の会社員B子さん。B子さんは25歳で、このマンションで1人暮らしていた。ナイフで数ヵ所を刺されて、すでに心肺停止の状態だった。マンションの室内は、争ったらしく、机などが倒れていた。部屋はマンションの2階で、男は窓ガラスを割って侵入したもよう。

刺した男は、身長が170センチぐらいで中肉中背。逮捕された時は、マスクをしてサングラスをしていた。手には重いカバンを持っていた。マンション近くで立っていたため、警察が職務質問したところ、男はあっさりと自白して逮捕に至った。カバンには血の付いたナイフが入っていた。

警察は2人の間に何かトラブルがなかったか、詳しい動機を調べている。

◎◎新聞(平成●●年1月11日)

新宿殺人事件 ストーカー行為で警察から警告

1月10日に新宿区で起きた女性殺人事件で、警察は犯人のA男は、B子さんに対してストーカー行為を繰り返して、何度も警告を受けていたことが判明した。

ストーカー

B子さんが警察に相談に初めて行ったのは平成28年8月だった。訴えを受けて新宿署は、A男を出頭させ警告書を手渡した。A男は受領確認書を書き、以後つきまとわないことを誓約したという。

だが、A男はその後もストーカー行為を繰り返した。B子さんの自宅の周囲を回ったり、B子さんの勤務先の前で待っていたこともあった。

そのため警察は、平成28年10月に再度A男を出頭させ、厳しく警告したという。A男はその時に「わかりました」と答えたという。

A男は、東京都で臨時職員として10年前から勤務していた。独身。新宿の区長は「区の職員がこのような事件を起こしてしまい残念だ。今後職員の指導に努めたい」と遺憾の意を表した。

B子さんは福島県相馬市出身。震災後に東京に転居し、家族と離れて暮らしていた。

2人は、A男が被災地への救援に参加したことがきっかけで知り合ったようだ。東京都は職員を被災地支援のために送っていた時期があり、A男はその中に含まれていた。2人は一時期交際していたようだが、B子さんが断ったようで、A男は復縁を求めてストーカー行為を繰り返していた。

◎◎新聞(平成●●年1月12日)

新宿殺人事件 男はマイナンバーで女性の居場所を突き止めていた

新宿のマンションでの女性刺殺事件で、新宿署は、A男がマイナンバーをもとに交際相手の女性の居場所や勤務先を調べていたと発表した。A男は東京都で臨時職員として勤務していてマイナンバーを元に情報を検索できる立場にあった。

新宿署は、A男が勤務していた東京都の新宿区役所を捜索して、情報検索の履歴を調べた。それによると、A男はB子さんの履歴を何度も丹念に見た履歴が残っていたという。A男が見たB子さんの情報の中には、本籍地、住所、勤務先、年収、家族構成、通院履歴など多様なものが含まれていた。

B子さんは、平成●●年に2回も同じ新宿区内で転居した。そのこともA男は知ることができる立場だった。

新宿署は、マイナンバーで知り得た情報をもとに、B子の居場所を特定してストーカー行為を繰り返していたとみて調べている。

◎◎新聞(平成●●年1月13日)

B子さんの結婚の嫌がらせ

新宿区の女性殺人事件で、新宿署は女性の携帯メールを履歴を調べて、A男がB子さんを脅迫していたことが判明したと発表した。

A男は、刺殺の1ヵ月前に「フェイスブックを見たけれど、結婚が決まったみたいだね」という内容のメールをB子さんに送っていた。このメールに対してB子さんは返信していない。無視されたA男は「相手にいろいろなことを知らせてあげても良いかな?」という意味深な内容のメールを続けて送りつけた。

B子さんは、故郷の女性の友達との間で、刺殺される3日間に「最近、辛いことが多くて悩んでる。これからどうしようか。もう結婚できないのか」と、LINE(ライン)で悩みを打ち明けていたことも判明した。

警察は、東京都勤務でマイナンバーを知り得る立場だったA男が、B子さんの結婚の嫌がらせをしようとしていたとみて調べている。

◎◎新聞(平成●●年1月14日)

都民のマイナンバー情報を名簿屋に売却 1000万円稼ぐ

情報漏洩

新宿の女性殺人事件で、新宿署は、犯人のA男がマイナンバー情報を大量にコピーして名簿屋に売却していたことが判明したと発表した。流出したのは、東京都民全員の個人情報で、氏名・生年月日・性別・本籍・住所・勤務先・所得・通院履歴等である。

新宿署は、捜査の過程で、マイナンバーをもとにA男の預金を調べた。そこで平成28年11月に1000万円を超える入金があった。A男に問いただしたところ、マイナンバー情報をコピーして持ち出し、名簿屋に売却したことを自白した。

新宿署の調べに対して、A男は「遊ぶ金が欲しかった」と動機を語った。

新宿区役所によると、各職員にはパスワードが付与されていて、それを打ち込めばマイナンバー情報を閲覧することができるという。

マイナンバー情報を売却した先は、私立探偵会社のC社。C社のホームページによると、
浮気調査・素行調査、家出・人探し調査、個人信用調査などを業務にしている。新宿署は、C社に対しても捜査に乗り出す。

1000万人を超える東京都民の個人情報流出というのは、過去に例のない大きさで、ショックを与えそうだ。

◎◎新聞(平成●●年1月15日)

記事では、新宿警察とか、新宿区役所とか固有名詞が出ているが、あくまでも空想に基づく記事である。
マイナンバーは、行政側にとっては、不正や脱税の摘発といった点で都合が良いかもしれないが、国民としては情報漏洩というリスクが気になる。このような事件が実際に起きないように祈るばかりである。
この記事は、マイナンバーに関する政府PRが頻繁に行われている平成27年3月に、警鐘を鳴らす目的で北見昌朗が執筆した。