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マイナンバーとは別の医療ID必要 日本医師会など声明
日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は2014年11月19日、「医療等IDに係る法制度整備等に関する三師会声明」を発表し、マイナンバーとは異なる医療IDが必要だと表明した。また、個人番号カードへの健康保険証の機能の取り込みに反対を表明した。
声明では、機微な医療情報を管理する番号がマイナンバー制度の個人番号のように一人ひとりに唯一無二の番号であれば、「過去から現在治療中の病気、死後にいたるまでひも付けできるということになる」と指摘。デジタルデータとして漏洩した場合は取り返しがつかないとして、医療IDは必要な場合に「忘れられる権利」「病歴の消去」「管理番号の変更」「複数管理番号の使い分け」などが担保される議論が必要だとした。
また、政府が検討している個人番号カードへの健康保険証の機能の取り込みに反対を表明した。その理由として、「券面に個別番号が記載されているカードを医療の現場で使うことは、患者の病歴という極めてプライバシー性の高い情報が個人番号とひも付く危険性が高くなる」とし、個人番号を医療の現場で利用すべきではないとした。
さらに、医療従事者には守秘義務(秘密漏示罪)が科されて懲役や罰金という厳罰がある一方で、個人情報保護法では事業者への行政処分の罰則にとどまり、医療従事者と同じ医療情報を取り扱えるのは矛盾だと指摘。「個人情報保護法改正案に医療情報に関する特例を規定すべきだ」とした。
また、現行の個人情報保護法では対象外となっている死者に関する情報について、死者や遺族の尊厳について法改正などで考慮するよう要請。公益目的の研究であっても生者に近い条件で取り扱うべきだとした。
医療情報に含まれる身体の特徴は他の情報と照合されれば個人が特定される可能性が否定できず、消費行動履歴やポイントなどと同じ扱いで済むとは考えられないと主張。医療情報の二次利用・突合に制限を求めた。
医療以外の異業種企業が新規ビジネスとして始めている遺伝子情報の収集・解析についても、遺伝的疾患などの情報から子孫が人権侵害や差別の対象となる可能性があるとして、集積や二次利用について制限を加える形で法改正を求めている。
一方で、地域医療・介護連携などで共通の患者番号があれば効率的になると指摘。救命活動の際には本人の同意がなくとも医療IDで関係機関が的確な情報を得られることが望ましいとした。また、法改正で新たに発足する第三者機関について、「個人情報を守る立場」の監視機関が必要だとした。レセプト(診療報酬明細書)情報の利用を踏まえて、医療従事者や医療機関などのプライバシーも求めている。
(日経コンピュータ大豆生田崇志)
[ITpro 2014年11月19日掲載]
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