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【社会】個人情報流出で米韓では社会問題化 ~マイナンバー~

(1)マイナンバー法案が衆議院で可決された翌日、5月10日、経済産業省は、民間企業が顧客の情報を「二次利用」する際の基本方針を示した。

フェイスブックやツイッターなどの「つぶやき」から、利用者の年代や性別などを推定する分析技術は、すでに構築されている。

そこに「二次利用」の指針を示し、IT戦略本部や規制改革会議などに提案することで、公共データをベースにした産業創出、成長産業へのガイドラインを策定する狙いだ。

(2)しかし、個人番号制を先行導入した米国、韓国では、情報流出事件が社会問題化している。

米国の社会保障番号は便利だから広がったが、その後、戦地に赴いた兵士への「なりすまし犯罪」が横行した。

被害件数1,170万件、損害額500億ドル(5兆円)に達する(連邦司法省のデータ、2006~2008年)。

米国で社会保障番号が導入されたのは1936年。サイバー犯罪などない時代だった。しかし、今では情報通信技術(ICT)が巨大なマーケットをつくる。

なりすまし犯罪に手を焼いた国防総省は、2012年、社会保障番号から脱退した。軍の関係者には、独自の分野別番号(セパレートモデル)を採用させた。すなわち、年金、医療、税などそれぞれの番号を切り離し、必要な場合は住民票コードに照らし合わせて確認するシステムだ。ドイツなどもセパレートモデルを採用している。

(3)日本が採用するフラットモデルは、一つの個人番号がマスターキーとなり、共通番号として官民で多目的利用する方式だ。米国以外に韓国などが採用し、すでに個人情報の流出が相次いでいる。

韓国の個人情報流出事件は、被害者はここ数年だけで累計延べ1億人を超える。韓国総人口(5千万人)の倍以上の被害者がいることになる。

個人情報は、民間企業からすれば美味しくてしかたがない情報だが、マイ・ポータル制では、ネット上で拡散していく可能性もある。マイ・ポータル制とは、インターネットで自分専用のページに接続すれば、保険料の納付状況、給与・報酬情報を見られる制度だ。

韓国が1968年に共通番号制を採用したのは、特別な事情があった。その年1月、北朝鮮の特殊部隊による朴正煕・大統領(当時)暗殺未遂事件が発生した。同年11月、スパイ識別を目的に住民登録証を発行し、すべての国民に識別番号が付与された。

当時は北のほうが経済力で優っていた。南側に危機意識が強く、国民の間に不安があって反発はなく、番号制度も人権問題にならなかった。この制度は、冷戦時代の遺産なのだ。

住民登録制度は、1970年に法制化した。カードに顔写真、氏名、住所が載り、番号を参照すれば生年月日、出身地、その他の情報も把握できる。

しかし、1980年代に民主化が進み、人権の観点から批判の声が高まった。

1990年代から2000年代に入ると、IT技術の向上とネット空間の拡大で、個人情報の取り扱いをめぐって社会問題化する。住民登録番号を保有する公的機関や企業が多いことから、ハッキングが簡単にでき、流出する際のリスクが格段に高まったのだ。

今年2月、改正情報通信網法が施行され、インターネット上で住民登録番号を収集、利用することが全面的に禁止された。利用者の住民登録番号を保有している企業は、2年以内に住民登録番号の情報すべてを破棄することが定められた。

ただ、金融機関だけは「業務の特性上」除外されている。

(4)マイナンバー制は、個人情報という巨大な市場を成長産業に位置づけ、かつ、その情報を政府も管理できる。統治する側にとっては、一石二鳥、いや一石三鳥にもなるウルトラC策に化けうる。

施行から、米国では77年、韓国では51年たって問題が浮上してきた。日本では、長くて10年、早ければ7~8年で弊害が浮き彫りになるだろう。

【白石孝・プライバシー・アクション代表】

□本誌取材班「個人情報流出で米韓では社会問題化 ~IT利権か公共事業か~」(「週刊金曜日」2013年6月7日号) http://www.kinyobi.co.jp/

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